『オペレーション オブ イラク The army of Ansar Al-Sunnah 第二話』

   配役

     合衆国陸軍第101空挺師団

      第三特殊作戦旅団


     ドナルド・ウェイン少尉♂:

     ジェシカ・マクレイン衛生兵♀:

     アンソニー・ナイト上等兵:♂

     フレデリック・ホワイト上等兵♂:


合衆国海軍海兵隊第一師団

       第六遠征先遣隊

     パトリック・ホーウェン少佐♂:

     ジャック・コーネリアス軍曹♂:

     スミス・レイン軍曹♂:


     アンサー・アル・スンナ軍

     タージュッ・ディーン♂:

     ムーニス♂:

     バースィル♂:


    UPI通信東京支局

    萩原 美紀♀:

    
    捕虜♀:

    10歳の少女♀:





背景:イラク市街地まで約3キロ地点。

アルバート・ヴァイス大尉、アレッサ・ウォーカー曹長を戦闘区域に残したまま、

101師団のメンバーはイラク市街地に差し掛かろうとしていた。


ウェイン少尉:もう後3キロ程行けば、町に到着する。

各自、戦闘準備をしておくんだ。


ジェシカ衛生兵:……了解。


    ナイト上等兵:…。(すすり泣きして下さい。)


    ホワイト上等兵:……あの、少尉。


    ウェイン少尉:わかっているさ。…わかっている。


    ホワイト上等兵:え…?


    ウェイン少尉:ナイト上等兵。(立ち止まり)


    ナイト上等兵:……。(すすり泣き)


    ウェイン少尉:彼女は必ず助ける…俺を信じてくれ。


    ナイト上等兵:……どう信じろって言うんですか。アリーは…アリーは…。くぅっ……。


    ウェイン少尉:聞くんだ!ナイト!俺たちが市内に向かっているのは戦闘の為じゃない。

             アリーを助ける為なんだ!


    ジェシカ衛生兵:少尉……。


    ウェイン少尉:これからナジャフに入る。今頃海兵隊が戦っているはずだ。彼等は同時に、

            指名手配の掛かっている容疑者を捜索中なんだよ。わかるか?


    ジェシカ衛生兵:少尉、ひょっとして…。


    ウェイン少尉:ハンヴィーを調達し、アリーと大尉を連れ戻す。奴等は絶対に生かしておくものか!!

             アリーは必ず生きてる。………手伝ってくれるな?


    ナイト上等兵:………はい!!一人になんかするもんか…もう少し……頑張るんだぞ…。


    ジェシカ衛生兵:先を急ぎましょう、少尉!


    ウェイン少尉:あぁ。ナイト、ジェシカと代わってやってくれ。


    ナイト上等兵:はい少尉。フレディ、俺の肩に掴まるんだ。


    ホワイト上等兵:すまない…面倒かけるな…。




  背景:アンサー・アル・スンナ軍の隠れ家


    捕虜:うっ…


     タージュッ・ディーン:気が付いたか。


  背景:起き上がろうとする捕虜を制止する


     タージュッ・ディーン:傷が塞がっていない。しばらく寝ているんだ。


     捕虜:私……帰らなきゃ…。


     タージュッ・ディーン:お前の仲間は町の方へ行った。しばらくの間、身柄は預からせてもらう。

             今はゆっくり休め。

     捕虜:捕虜…なのね?


     タージュッ・ディーン:……そういう事だ。


     ムーニス:同志、そろそろ物資が届く時間です。俺とバースィルで行きます。
 

     タージュッ・ディーン:わかった。この捕虜は俺が見張る。サマワは気を付けて行け。
                 
                 アメリカがいるからな。

     ムーニス:………はい。


  背景:ムーニスが顎で合図し、二人とも出て行く。


     タージュッ・ディーン:喉は乾いていないか?タバコは?


     捕虜:いえ…


     タージュッ・ディーン:何か必要なものがあれば言ってくれ。物資は一週間に一度しか来ないが。


     捕虜:…私をどうするつもり?


     タージュッ・ディーン:殺すならとっくに殺してる。今頃アスファルトにお前の脳が散乱してるだろうな。(口調を強く)


     捕虜:……………。(ガタガタ震えている)


     タージュッ・ディーン:怖いか?……俺達もだよ。


     捕虜:……え?


     タージュッ・ディーン:仲間には言ってないが、この戦争の勝敗はすでに決まっている気がする。


     捕虜:……どういう…こと…?(震えながら)


     タージュッ・ディーン:君たちの勝ちなんだよ。軍曹。


     捕虜:………。


     タージュッ・ディーン:女の服を弄るのは好まないが、認識票だけは見せてもらった。


  背景:捕虜は顔を逸らしてしまう。


     捕虜:あなた、出身は?英語がお上手みたいだけど…。


     タージュッ・ディーン:イラクだ。英語はアメリカで。


     捕虜:戻ってきたのは…神の為?


     タージュッ・ディーン:弟が軍に殺された。まだ12歳だった…。これは俺にとって弔い合戦ってわけだ。

                 ………怪我させて悪かったな。


     捕虜:私…銃が嫌いなの。戦うことも、人に銃を向けるのもイヤ……みんなが仲良く幸せになって欲しい。


     タージュッ・ディーン:平和を望むことは悪いことじゃない。お前のその心はいつまでもなくさないでくれ。
                 
                 …俺たちはこの戦争で死ぬ。嘆く者も悲しむ者もいない。これ以上やつらの勝手にさせておく

                 ものかっ…!!ふふっ、心配するな。傷が癒えたら必ず生きて帰してやる。

     捕虜:私、あなたの力になりたい。お願い。一緒に連れて行って!


     タージュッ・ディーン:バカを言うな。敵についたとなれば、タダじゃ済まないんだぞ?命の保証は何処にもない。

     捕虜:命を救ってくれたもの。……恩返しじゃないけど、何かしたいの!


  背景:半ば困ったように溜息


    タージュッ・ディーン:…。


  背景:車で補給物資を取りに行ったアンサーアルスンナの二人

      ムーニス:なぁ、お前どう思う?

      バースィル:おかしいですよね。あの同志が敵兵を助けるなんて…。

      ムーニス:同志の動きに気をつけろ。イヤな予感がする…。

      バースィル:わかりました。報告は逐一。


  背景:イラク市街地 R地区米軍拠点ポイント104

  SE:ハンヴィーの音

  背景:拠点防御の為、少佐が兵士達に指示を出している


      ホーウェン少佐:そこの土嚢はもっと高く積み上げろ!!機関銃は二丁配置しておけ!!

      コーネリアス:ったく、なんで俺たちがこんな地味な作業しなきゃいけないんだ?

      レイン:文句言うなよ。やってらんないのはお前だけじゃねぇ。

      コーネリアス:くそぉ!いっそイラク女でも捕まえてやっちまおうぜ!?俺の自由の女神がおっ勃っちまってる!!

      レイン:はははっ、ミニチュアの女神だろ?ほざいてろwwww

      コーネリアス:ファック!

  背景:レイン軍曹がコーネリアス軍曹に中指を立てる

  背景:101空挺の一団が到着。

     ウェイン少尉:誰か将校はいないか?

     レイン:101師団?なんでこんなとこにいるんだよ。作戦エリア外だろ?

     ウェイン少尉:あぁ、わけがあってな。ここの指揮官は誰だ?取り急ぎ用件があるんだ。

     コーネリアス:パトリック・ホーウェン少佐です。現在拠点維持の為、資材搬入を指示しています。

     ウェイン少尉:ありがとう。ジェシカ!フレディを休ませてやれ。お前たちも小休止だ。

     マクレイン衛生兵:フレディ、大丈夫?よくここまで頑張ったわね。ほら、包帯を取り替えるからそこに座って。

     ホワイト上等兵:あぁ…、くっ…うぅ…(突然泣き出す)

     マクレイン衛生兵:自分を責めないで…あなたはよく頑張ったわ。ねっ?私がついてる。大丈夫よ…。

  背景:マクレイン衛生兵がホワイト上等兵を胸に抱きかかえ、頭を撫でる。嗚咽を堪えしがみつくホワイト上等兵。

      マクレイン衛生兵:ナイト?あなたは大丈夫?怪我とかはない?

      ナイト上等兵:殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる…。

  背景:ホワイト上等兵を休ませ、すぐさまナイト上等兵のそばに駆け寄るマクレイン衛生兵。

      マクレイン衛生兵:ナイト!しっかりして!アレッサは絶対生きてるって信じるの。いい?あなたが潰れちゃ助けに行けないんだから。
         
                  …頼りにしてるわ。あなたの気持ち…知ってる。ホントはね…アレッサも……うん。
                
                  好きだって言ってた。いつもあなたの話になると嬉しそうにしてたなぁ…。

      ナイト上等兵:えっ…そんなこと一度も…。

      マクレイン衛生兵:恥ずかしくてずっと言えなかったのよ。そういう子なの。あの子は。だから…気をしっかり持って。
         
                  アレッサの為にも。出来るわね…?

      ナイト上等兵:あぁ…わかった。わかったよ…。俺は大丈夫だ。

      マクレイン衛生兵:よしっ!

      ナイト上等兵:ジェシカ、お前こそ少しは休めよ…。ずっと動きっぱなしだろ。

      マクレイン衛生兵:あら、心配してくれてるの?へぇ…、意外と優しいんだぁ?

      ナイト上等兵:お前になんかあったら、誰が怪我人の手当すんだよ…。

      マクレイン衛生兵:ふふっ、あんたに言われなくたって分かってるわ。私は大丈…夫。

   背景:その場に倒れるマクレイン衛生兵
  
      ナイト上等兵:ジェシカ!!!おい!!誰か!!!ジェシカが倒れた!!

   背景:少佐を探していたウェイン少尉がすっ飛んできて、ジェシカを抱きかかえる。

      ウェイン少尉:過労だろう…。ジェシカ?ジェシカ?おいナイト、軍医か衛生兵呼んで来い!
       
               ……一番堪えてるのはジェシカ…お前なのにな…。

      ナイト上等兵:はい!!

   背景:ナイト上等兵が軍医を見つけ、ジェシカを救護所に運ぶ。栄養剤を点滴し、安静にするジェシカ。

      ウェイン少尉:ナイト、ジェシカのそばについていてやってくれ。俺は少佐に車両の交渉をしてくる。頼んだぞ。

      ナイト上等兵:了解。

   背景:ホーウェン少佐を見つけたウェイン少尉。

      ウェイン少尉:少佐!ホーウェン少佐!!

      ホーウェン少佐:ん?君は誰だ。

      ウェイン少尉:自分は101空挺師団第三特殊作戦旅団のウェイン少尉であります。

      ホーウェン少佐:海兵隊第一師団のホーウェンだ。私に何か用か?

      ウェイン少尉:はい少佐。ハンヴィーを数台貸していただけないでしょうか?

      ホーウェン少佐:それはならん。現在容疑者の捜索任務中だ。…何があった?

      ウェイン少尉:少佐、先ほど私の部隊が過激派と思われる数名の民兵に攻撃されました。ここから4キロほど離れた地点です。
   
      ホーウェン少佐:なんだと…?

      ウェイン少尉:隊長アルバート・ヴァイス大尉が戦死、以下一名の生死の確認が取れておりません。

      ホーウェン少佐:で?連れ戻したいと。そういうことか。…残念ながら車両は出せない。君の意見はよくわかる。
        
                しかし今うちにはその余裕はない。後で別動隊を出してやる。

                それまで君たちにはここの警戒に当たってもらいたい。

      ウェイン少尉:少佐!!

      ホーウェン少佐:少尉。君が考えている程現在の戦況は甘くはない。

                捜索隊を出してやるだけでも満足するんだな。以上だ。

      ウェイン少尉:くっ…。

   背景:唇を噛みしめ、握りこぶしを作り耐えるウェイン少尉。

   背景:みんなの元へ戻るウェイン少尉。

      ナイト上等兵:少尉、どうでしたか?

      ウェイン少尉:要請は却下された。あぁ…、ハンヴィーは出せない。くそっ…。

      ナイト上等兵:だったら歩いて戻りましょう!!!一刻も早く!!!

      ホワイト上等兵:おい!ジェシカはどうする!?疲れ切ってるんだぞ…。

      ナイト上等兵:だったら!ジェシカを置いてでも…。

      ホワイト上等兵:バカ野郎!!!!!!あいつはな…。

      ウェイン少尉:やめろ!ホワイト!!

      ホワイト上等兵:しかし…。

      ウェイン少尉:みんな落ち着け!冷静になるんだ…。

   背景:溜息をつき空を見上げるウェイン少尉


   SE:バケツを蹴る音


   背景:簡易司令室

     ホーウェン少佐:ハンヴィーを貸せだと? 若造が戦争というのをなにもわかっちゃいない。
        
               しかし、別働隊を用意すると言った手前出さねばならんが、手の空いている者はいない。
        
               どうしたものか…。

   背景:防衛ライン建設現場

     コーネリアス:あ〜あ、ったくよう、なんで俺たちがこんな下っ端の仕事をやらなきゃいけねえんだ
         
                 ちゃんとこれは手当てが出るんだろうなあ!!

     レイン:愚痴んじゃねえよ、馬鹿!! テメエさっきから動いてるのは口ばっかで
      
            手が動いてねえじゃねえか!!なんだ、その自慢の筋肉はハリボテかあ!?ああ!?

     コーネリアス:うるせえ!テメエも対して俺と変わんねぇだろ!!
         
            だいたい俺の筋肉はこんな時の為に使うものじゃねえんだよ!! 俺の筋肉は女を抱く時だけに使うんだよ!!
         
            テメエの立たないイチモツと一緒にすんじゃねえ!!!
 
     レイン:んだとお!! だいたいお前の筋力じゃ抱いた女も苦しくて悲鳴上げちまうよ!!
      
            俺はインポじゃねえ!! 俺の自由の女神様はいつでもどこでもギンギンなんだよ!!!
     
            だいたいなんだ 前の女は!!ただのアバズレじゃねえか!!! お前の紹介する女は全部変人なんだな!!
     
            ああ〜 お前も変人だから仕方ねえよな!!!

     コーネリアス:やかましい!!! 俺の筋肉は女を優しく包み込むんだよ!!
         
            小さいテメエの自由の女神様と一緒にすんな、クソッタレが!! 

            あの女はな、お前にはジャンキーがお似合いだと思ったから
         
            紹介してやったんだよ! 優しい俺様に感謝してケツにキスでもしやがれ!!

     レイン:ゴミ野郎…。

     コーネリアス:んだとお!!!!

     レイン:やんのかあ!!!???

     ホーウェン少佐:いい加減にしろ!!!!!!!

     レイン:ああ!?

     コーネリアス:んん!!???

     ホーウェン少佐:ハァ… 貴様等は力仕事ひとつも出来やしないのか…。

     コーネリアス:しかし少佐!!奴が!

     ホーウェン少佐:関係ない!!! まったく…貴様等に任務を言い渡す。

    背景:敬礼をする レインとコーネリアス

     ホーウェン少佐:本日未明、合衆国陸軍第101空挺師団第三特殊作戦旅団の部隊がテロリストによる襲撃を受けここに到着した。
        
               その内の二名が負傷、戦場に置き去りになったそうだ。一人は身動きが出来ない。
        
               お前たちは部隊を率いて残りの第三特殊作戦旅団のメンバーと共に、二名の捜索及び生存確認を命ずる。
        
               なお、車両は手配出来ない。徒歩で現場に向かうこと。以上だ。

     レイン:徒歩でって…また無茶を言いますね。

     ホーウェン少佐:残念だが、これは決定事項だ。今すぐ装備をまとめ出発しろ。

               いいか、もし二名が死亡していても必ず連れて帰れ! 我々は仲間を見捨たりはしない!!

     コーネリアス:わかってますって、死体になっても 本土の土を踏ませてやりますよ!!

     ホーウェン少佐:任せたぞ!では、解散!

   背景:その場を去って行くホーウェン


     コーネリアス:しかし 車両も無しか こりゃあ面倒くせえなあ。

     レイン:仕方ねぇだろ。俺たちにはこんな任務しか回ってこねえよ。

     コーネリアス:ハハッ!そりゃそうだな! んじゃ 行こうぜ 相棒。

     レイン:ハッ!先にくたばるんじゃねえぞ、相棒。


  背景:イラク郊外

     萩原 美紀:ここ!ここよ。カメラ回して。入ってる?私は今、イラク郊外に来ています。
      
           激しい空爆の後、建ち並んでいた家々はすべて瓦礫の山になり、人々は
      
           当てもなく彷徨い歩いています。ここでは数名のアメリカ兵が民間人の
      
           所持品検査を行っているようです。危険物の確認をする兵士もまた、
     
           常に緊張を強いられています。

    10歳の少女:ねぇねぇ、お姉ちゃん。綺麗な貝殻あげる。見て見て。


     萩原 美紀:あっ、今少女が私に近づいてきました!何か渡そうとしています。

    10歳の少女:お母さんにもらったの。お姉ちゃんのお守りにして?

     萩原 美紀:お母さんはどこ?これは大切なものなんでしょ?持ってなきゃダメよ。

    10歳の少女:お母さんは爆弾で死んだわ。お父さんはアメリカ兵に撃たれて。

     萩原 美紀:あなた…一人?お姉さんと一緒に来る?はいこれ、甘くて美味しいわ。

  背景:美紀は少女に小さなどら焼きを一つ渡した。

    10歳の少女:お姉ちゃんありがとう。…美味しい。

     萩原 美紀:よかった。私の好物なの。

    10歳の少女:お姉ちゃん。私行かなきゃいけないの。

     萩原 美紀:えっ…、どこに?

    10歳の少女:神様の所へ。アラーは私のお父さんとお母さんに会わせてくれるんだって。

     萩原 美紀:…?何を言って…あっ。

  背景:少女は米軍兵士とイラク民間人の所へ走っていく。

     萩原 美紀:待って!!

  SE 爆発音

    萩原 美紀:ひぃぃぃっ!!!!

  背景:10歳の少女は所持品検査の現場で自爆した。アメリカ軍兵士及びイラク民間人は
   
      爆発に巻き込まれて一人残らず死亡した。

    萩原 美紀:あっ…あっ…ぎゃぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁあ!!!!!!

  背景:少女は下半身が砕けたが、何かぼそぼそ呟いている。震えながら近寄る美紀。

    萩原 美紀:惨い…あぁ……そんな…

   10歳の少女:お姉ちゃん………お菓子…ありがと…かっ…ゴフッ…。



   第二話END

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